




ということで、今回は人気の日本茶カフェやおしゃれなお茶のビジネスではなく、昔から町の商店街などにあります「お茶屋の商売」についてご紹介していきたいと思います。
とあるお茶屋(組合加盟店の小売店)の1年
4月「新茶①」

新年度のスタートでもあり、お茶屋にとっても始まりの月です。新緑の季節。「新茶」(一番茶)の摘採がはじまります。
第3週目頃には鹿児島県において第一弾最盛期に突入します。
ここでのお茶は、のちの静岡県をはじめ全国の茶の生育状況の参考にもなりますし、いまや日本一の大産地として多くのお茶を生産されていますので、多くの茶商が現地に買い付けに向かいます。
この鹿児島新茶が<走り新茶>として、例年4月の中旬以降に東京の店頭に並びます。そして、下旬にいよいよ静岡からも新茶の号砲が鳴らされます。「今年はどんなお茶ができるのか?」ほとんどのお茶屋がドキドキワクワクそわそわしております。
https://tokyo-cha.or.jp/article/new-year-of-tea-2018.html
5月「新茶②」

八十八夜(例年5月2日)を迎えます。
東京のお茶屋はほとんどといって良いほど静岡茶を扱いますので、この時期は特に真剣勝負の毎日です。
店舗には毎日多くの見本のお茶が届き、また実際に静岡県で長期間滞在し仕入れをします。1か所だけでなく、県内を回って良いお茶を選抜して仕入れをします。
良い仕入れができた後は、いち早くお客様にお届けします。ここが一番重要です。
今年のお茶の特徴をご説明し、ご納得いただきお客様が「おいしい」と喜んでいただいてようやく一息。
年間のお茶の仕入れはほとんどがこの時期に行われますので、まだまだ気が抜けないことと、毎日お茶を吟味するためにお茶を飲み続けるので、この頃は大体胃腸が弱くなり、痛くなります。
https://tokyo-cha.or.jp/article/how-to-purchase.html
6月「イベント①」

新茶の遅い山間地のお茶もこの時期には大体出揃いますので、あらかじめ仕分けしたお茶をもう一度全部机に並べて、どのお茶とどのお茶を掛け合わせて合組(ブレンド)するか再検討したりします。
また、例年組合主催の抜き買い審査会(リンク)が行われ、審査に合わせてその年の茶の販売傾向や品質も確認をしたり、東京茶業青年団主催のイベントもあり、せわしなく過ごします。
https://x.com/tokyochakumiai/status/1932014820678894013
7月「イベント②」

今月は、東京都優良茶品評会の審査があり、各産地商社から出品されたお茶を拝見し、今年の高級茶の傾向、商社の意気込みを感じつつ、外部からお招きした茶の研究者・専門家の意見も交えて、賞が決められます。
季節的に暑くなってきますので、お茶っ葉の消費はちょっと少なくなる分、「冷茶」などの健康効果の宣伝やお茶を使ったスイーツなどいろいろな取り組みを提案しこの時期もお茶を楽しんでいただけるように創意工夫でがんばります。
https://tokyo-cha.or.jp/article/tea-fair-2011.html
8月「大会へ向けた練習会」

青年団では9月に全国茶業連合青年団主催の全国茶審査技術競技大会(通称・全国大会)が開催されます。その本番に向けて本格的な練習会がスタートします。
練習は多くの資料茶が必要で、(産地や品種など20種類以上)また裏方スタッフも多くの手が必要となりますので、諸先輩(都内組合加盟店の方々)にお手伝いただき、週に2回ほど3~4時間みっちり特訓させていただきます。
世の中は「お盆休み」「夏休み」ですが、私たち商売人はサービス業ですので、皆さんがお休みの時こそお仕事をさせていただいておりますが、子供たちと休みが合わないなどで申し訳ない気持ちで過ごす日もあります。
https://www.tokyo-cha.or.jp/article/tea-competition-2025.html
9月「全国大会/品評会」

いよいよ本番、全国大会です。全身全霊で臨みます。大会はコンディションが大切です。食事の内容もアスリートのように精査し、当日は塩むすびだけや空腹で臨むなど味覚・嗅覚に影響がないよう注意します。
この日程の前後で毎年行われるのが、各地の茶品評会の入札会です。全国品評会や関西品評会、そして東京都優良茶品評会など、その場でしか入札できない、買い付けできないお茶がある為、必ず現地に赴き入札します。
品評会とはお茶のランク付けコンテストのようなものです。その年に生産されたお茶の最高級品が集められます。
ですので、概ね3000円/100gくらいまでのお茶は新茶の時期(4~5月)に販売開始されますが、最高級4000円以上の今年度産の煎茶や玉露などは、この時期にはじめてお目見えします。最高級茶の“新茶”の季節とも言えます。
10月「お茶まつり」

組合加盟店では、毎年「お茶まつり」を開催します。
気候も暑さの峠を越えてだんだんと秋に向かう時期、だんだんとお茶を飲みたくなる時期もあり、高級茶も陳列され、お茶まつりを楽しみにしてくださるお客様も多いので張り切り時です。
組合では毎年お客様にお喜びいただけるように様々企画しております。
実は、お茶の葉に力のある良いお茶は、夏を超えて熟成されてこの時期に味に深みが出てきます。茶道の世界では「口切りの茶事」というものがあります。その年の新茶を壺に詰め、封を保管し、それを11月に開封して味わうというものです。徳川家康公もこの時期のお茶を好まれたとか。冬にかけてのこの時期はまさにお茶のおいしい季節と言えます。
https://www.tokyo-cha.or.jp/article/tea-festival-2025.html
11月「理事長杯」

東京都の組合員向け茶歌舞伎の会「東京都茶審査技術競技大会<理事長杯>」が開催されます。
組合加盟の従業員さん、ご家族など老若男女が同じお茶で行う競技会です。現役選手は「全国大会よりも緊張する」という感想もでるシビアな戦いです。
この大会では感性のよい子供が正解を連発し大人顔負けの成績を収めたり、大先輩を負かす新人がいたり、奥様に負ける旦那様がいるなど、茶業者の名誉をかけた本気の大会で皆、普段は優しい方々ばかりですが、この日ばかりは目が笑っていません。
そんな中2025年の理事長杯を手にしたのは、
優勝 三室 茂氏 (茶舗大坂や/都立大学)
2位 大山 善史氏(しもきた茶苑大山/下北沢)
3位 大澤 一貴氏(大佐和老舗/湯島)
以上の方々でした。最後の最後、1点を争う、同点でも点数の取り方を問う激戦でした。
またこの時期はお茶について様々な講師の先生を招いて勉強会も開催し、専門店としての資質を向上させたり、情報収集をしたりしてスキルアップするなどプロとしてあらためて学ぶ季節でもあります。また多忙になる12月を前に一足早く「納会(忘年会)」を開催して、お互いの商売の健闘を祈ります。
12月「年末商戦」

昨今は「お歳暮」を贈る文化はなくなりつつありますが、それでもこの時期ご贈答に多く、実店舗には多くのお客様がご来店されます。
またインフルエンザや風邪の多い時期ですので、緑茶の健康効果からお茶の消費量も増える時期であり、毎日多くのお客様で賑わいます。外国人観光客の方も多く往来され、体調に気を付けながら大晦日まで営業します。
「12月の文章が少なっ!」と思われるかもしれませんが、お陰様でご来店くださるお客様で毎日本当に忙しいのがこの時期です。他の月の短距離走のような仕事でなく、マラソンのように体力をコントロールしながら振り絞り発揮して走り抜くのがこの時期のお茶屋です。
ですので、年明けの「箱根駅伝」には余計感情が入り、目頭と握るこぶしが熱くなるのは気のせいではないかもしれません。
https://tokyo-cha.or.jp/article/influenza-and-green-tea.html
1月「御年賀」

元旦、三が日も絶賛営業します。人様がお休みの時はいつでもお仕事です。
お年始のご挨拶や旅先のおみやげなどにも「日本茶」は人気です。毎年この時期は、何曜日なのか?何日なのか?不意にわからなくなることがあります。いつの間にか年を越し、お正月が終わっていた、ちょっとした浦島太郎気分を味わいます。
「仕事始めの神田明神の参拝のニュース」をみるとようやく一息。しかし、世の中は本格的に新年がスタートしますので、それに合わせて、お茶屋も賀詞交歓会や地域の新年会などにも参加させていただき、あわただしく1年がスタートします。
1年の振り返りや新年の抱負を落ち着いて考える余裕もなく過ごす日々に疲れも相まって、自問自答し始める時期でもあります。新年早々はテンションが下がりますが、そんな時こそ、お茶をゆっくり淹れて飲んで心を穏やかに過ごします。
一杯のお茶が心をスッキリさっぱり清らかにしてくれるのを一番感じるのはもしかしたらこの時期かもしれません。
「のどが渇けば水を飲み、心が渇けばお茶を飲む」
茶業の大先輩のお言葉です。
2月「新茶準備」

茶の資材の展示会や、組合では次年度に向けての体制作りや引き継ぎも行われます。
商売においては昔から「ニッパチ」(2月と8月は閑散期)と言われますが、日本茶はこの時期もよくお使いいただき、確定申告や事務的なお仕事も多いのがこの時期です。青年団においては「新年会」や全国青年団の総会(1月末)なども開催される時期です。
https://tokyo-cha.or.jp/article/buying.html
3月「さくら/新茶準備」

気が付けば、段々暖かい日も増え、ハウス栽培や南の離島などで「新茶」の話もチラホラ聞かれ始めます。いよいよ新茶に向けて準備がはじまります。
この頃から、お天気が気になり、積算温度だの茶産地に雨が降ったの降らないとのなどの情報も活発に共有され、新茶に向けての情報収集や予想などが話題の中心になります。
茶の栽培は生産家さんが丹精込めて1年間茶園を管理されていますが、最後の最後はこの時期の天気次第です。
この頃、気候が狂うと、正直本当に頭を抱えなくてはいけません。
対処できないほど急に寒くなる日が1日でもあったり、夏のように暑い日が続いたりして、新芽が不自然に伸びてしまったりすると、茶の香り・味に非常に大きな影響があります。
そしてお店では春休みや桜が咲き始める頃になると多くの人が街に繰り出され動きが活発になります。街に人が出てくると、お陰様で私たちのお仕事も忙しくなります。
色々な出会いと別れのご挨拶にも昔からお茶はぴったり。日本茶もよくお使いいただきます。
あ!気が付けば光陰矢の如しという1年間。
小学生の頃は、長く感じた1年も、だんだん光の速さへと加速し、「遠吠え」ももはや小言のようにむなしく響き、あの頃未来を見つめていた眼差しは、近くのものすらぼやけはじめ、きれいに整えられた頭皮の畑も、不毛の地となり……(以下割愛)
しかし、長年の経験と信念の積み重ねによって、いびつな中にも独特の雰囲気が相まって「侘びさび」のようなたたずまいとして、おいしい一杯の為、飲む人の心を癒す器として、静かにそこに存在する、そういう者に私はなりたい。とアメニモマケズに日々を過ごしています。
お茶屋の仕事とは

1年を通して一番重要なお仕事は、ご来店くださるお客様のお迎えです。
専門店で販売しているお茶は、その店の茶師、店主が独自に厳選しており、爽やかな味を特徴としたお茶や、逆に濃い味を専門としたお茶、鹿児島や静岡など細かい設計でブレンドしたりシングルオリジンで販売したりと千差万別です。
ですので、まずは店員に好みを伝えたり、用途を相談したり、おすすめを聞いて、可能なものがあれば試飲してみたりすると自分にピッタリのお茶に出会えて面白いですよ。
(お茶のパッケージは、同じお値段、また同じパッケージがあっても、お店ごとに中身は全然違います。お茶の包装資材は実は作っているメーカーが数社しかないので被ってしまうこともよくあります)
もし、行った専門店に好みがなかったりしても、専門店の店主などは、どのお店がどのお茶を扱っているかわかっていたりするので、良い店も紹介してくれると思います。
お茶屋になりたいと!と思われた方
東京都茶協同組合加盟のすすめ
「お茶は嗜好品なので、自分が好きなお茶を選び仕入れて売ればいいのですが……」
実は組合員になると自然にこんな日本茶に必須な能力が身に着きます!
『茶鑑定力』
品質・製造の良し悪し、各産地の特徴が、お茶の鑑定能力が身に着きます。
例・「秋落ち」という言葉を知っていますか?これは新茶の時期にとても良いお茶だと思っても、夏を越えると味もそっけもなくなってしまう。逆に、うまく熟成されたお茶は、秋口にはさらにおいしくなってきます。これを見分けられるのも鑑定能力の一つです。
https://tokyo-cha.or.jp/article/aging.html
『季節感』
日本の四季を感じられ、より日本を深く知ることができます。
昨今はインバウンドで海外の方々の日本茶への興味も増しております。お茶を知ることは日本を知ることに繋がり、日本の文化への造詣が深まります、と同時に、海外の方へ日本茶を紹介する機会も多いので、海外志向の方々も組合員になられる方も多くいらっしゃいます。
『相場観』
お茶は植物。新茶の時期、雨の前、雨の後では品質も茶の値段も、お茶時場所でも手に入るお茶も全然違います。自分の欲しい品質を欲しいタイミングで買い付けられるか長年の勘所と産地との信頼関係・情報共有が重要です。なかなか個人では難しいものですが、組合を通じることで、蓄積された知恵や人にアクセスすることができます。
『各種品評会への参加権』
一般の方々は参加できません。組合加盟することで、各品評会において日本茶の頂点をみることができますし、入札し落札できれば販売することもできます。
『インストラクション力』
組合では、都内の小学校において「お茶のいれ方・食育授業」も実施しております。子供たちにお茶を説明することは、言葉を選んだり、しゃべり方を工夫したりと知恵が必要です。経験を積んでいるうちに、いつの間にかおいしいお茶を説明するプロになることができます。
https://tokyo-cha.or.jp/article/food-education-001.html
あまり期待できないこと
・世間のトレンド察知力
・SNS等のWEB関連技術
上記は、組合に在籍してもなかなか身に付きませんね……
東京茶業青年団の紹介

青年団では、茶鑑定技術がイロハから学べ、全国大会への出場権も得られます。大会で好成績をおさめれば段位も授与されます。皆でディスカッションすることで、好きだけではない、日本茶に対する深い理解が得られ、トレンドや若手独自の取り組みで日本茶のPR活動も行っております。
全国のお茶関係者(全国茶業連合青年団(当団含め全13団))と定期的に交流があるので、より深くお茶を知ることができます。また組合で開催されます各種勉強会を通じて資質向上、茶専門家としての能力も向上していただけます。
(50歳以下(大会参加は45歳以下)の組合員であればどなたでも参加できます)
お茶屋をはじめたい、また始めたけど……色々分からないことがあるという都内の方は、一度お問い合わせください。(加盟には審査もございます)
https://tokyo-cha.or.jp/about-us.html
お茶は本当に色々種類があり、淹れ方もあり本当に奥が深く、また楽しみも深く、素敵なお仕事です!
ぜひ、組合加盟の専門店に一度お越しください。組合員一同皆様のお越しをお待ちしております。