2023年3月25日

流行に敏感な若者にブーム!「品種茶」ってなに?

ここ数年、個性的な日本茶喫茶や和カフェが都内の人気エリアで次々と開業し、新しい喫茶のスタイルが増えてきました。メニューも従来の「せん茶」や「ほうじ茶」などの大まかな分類ではなく、「シングルオリジン」や「Z1」「香駿(こうしゅん)」など聞きなれない言葉・文字が並び、流行に敏感な若者を中心に賑わっています。

それらの「流行り」のお茶を注文すると、見た目は馴染みのある緑色の液体ですが、今までとは違う香り、口に含むとまるでお茶ではないような味のハーモニーが広がり、今まで日本茶を飲む習慣がなかった人たち、ペットボトルのお茶しか知らなかった世代の人たちも、日本茶の魅力・奥深さを感じて、積極的にSNSで発信し共感を得ているのがとても印象的です。

これらの話題のお茶は「品種茶」と呼ばれるお茶です。品種茶も、れっきとした日本茶・緑茶です。

品種とは、分類上は同一の種ではありますが、特定の特徴を発揮するために改良・育種されたものです。お米で言えば「こしひかり」「あきたこまち」「ゆめぴりか」、イチゴで言えば「あまおう」「とちおとめ」「紅ほっぺ」などが有名かと思いますが、日本茶も同じように、たくさんの品種があります。

日本における茶品種は2019年3月時点で119種にのぼります。この中には、紅茶向け品種や烏龍茶向け品種など、目的に合わせた栽培をしている品種もあります。しかし、品種茶がすべて圧倒的な個性を放っているわけではなく、個性的な俳優のような品種から、脇役のようにお食事やペアリングで他のモノを引き立ててくれる品種、近年の研究で明らかになってきた、アレルギーやウイルス・体内の抗酸化作用に効果が期待できる成分を含む保健効果の高い「機能性品種」と呼ばれるものまで、様々です。

なぜ品種が必要なのか?

品種茶以前、日本にはもともと「ヤマ茶」と呼ばれる、その名の通り「山に自生する茶の樹」がありました。また、中国大陸に渡った僧侶が、日本に種を持ち帰り播いたもの、そこから増えていったものなどを「在来種」と呼んでいます。

在来種のお茶は、現在の日本茶の品質鑑定基準に照らすと、茶葉の形は不揃い、お茶の水色(浸出液の色)も評価から外れてしまいますが、とても香りが高く、野性味あふれる趣があり、現在の流通しているお茶に比べるとからっと爽やかな風味が特徴です。在来種は生産量も少なく希少性もある為、昔からの根強いファンにも飲み続けられています。

しかし、在来種の茶園は、同じ地域、同じ畑で栽培をしても、茶芽の伸び・生育状況・収穫量などがまばらで、均一性がとれないという大きな課題がありました。また、戦後、日本が復興していく中で、国内における茶の需要の高まり、安定した品質・生産量の必要性が急務になり、しかも、味や香りが良く、品質も一定で安定して栽培ができる茶が求められるようになりました。

そんな時流の中で「やぶきた」という大変優秀な品種が注目されはじめ、人気が急上昇、国内での栽培面積が飛躍的に増えていき、日本茶の代名詞となっていきました。

「やぶきた」は、明治41年に静岡県の杉山彦三郎という育種家によって、多くの茶品種の中から選抜されました。茶の世界ではまだまだ品種・育種という概念すらない中、杉山氏は、生涯100種にも及ぶ品種を送り出しており、その中で、試験をしていた竹薮を開墾した茶園の中から、2本を選抜し、北側のものを「やぶきた」と命名しました。

この「やぶきた」をはじめ、品種茶は一朝一夕にできるものではありません。育種には、現代の科学技術を用いても様々な試行錯誤が繰り返され長い年月を要します。例えばたくさん収穫できたもの、味がよかったもの、また病害虫や冷害などに強いものを選んで株分けし、増やしていくなどという形で、年単位の地道な研究が必要です。

ちなみに、この「やぶきた」、選抜から多くの茶園で植えられ、日の目を見るまでは、実に約50年、半世紀の年月がかかっています。

ほとんど「やぶきた?」

令和3年、全国の茶品種栽培面積では、静岡県では実に90%、全国でも約68%を「やぶきた」が占めています。(農水省)2位・「ゆたかみどり」6%、3位・「さえみどり」4%と続きます。(2,3位はほとんど鹿児島県での栽培です)

全国茶品種栽培面積

あらためて、現在「やぶきた」をはじめ、なぜ多くの品種を栽培するのでしょうか?

品種を栽培する理由は大きく分けて2つあると思います。

1)生産側から見たメリット
2)販売側、お客様から見たメリット

1は、品種の特徴を活かし、
・病害虫に強い。
・寒さに強い。
・品質が高い(付加価値がある)や収量(採れる量)が多い。
・計画的に、長い期間をかけて摘採できる。
・茶の製造・加工作業、労働の集中を分散できる。等があげられます。

(「やぶきた」を基準(中生品種~ちゅうせいひんしゅ~)にして収穫時期の早いもの(早生品種~わせひんしゅ~)や遅いもの(晩生品種~ばんせいひんしゅ~)を組み合わせて栽培することで、お茶の収穫時期を計画的に分散させて、お茶を製造する工程を、効率よく、お茶にとって最も適したタイミングで摘むことができる。緑茶は、摘採後すぐに蒸気で蒸して加工を始めることが必須である為、摘採後に長時間そのまま放置してしまうと品質が低下し欠点茶になってしまう。欠点茶については、前回の記事をご参照ください)

2は、
・味や香りの選択肢が広がる。
・・多様化した嗜好の違い(国内のみならず海外の方へ向けても)に合わせることも出来、また和食のみならず様々な食材や食事にペアリングできる。
  (品種茶の特徴をそのまま楽しんで主役として、また品種の強い個性は和菓子のみならず洋菓子にもペアリング、合わせて名脇役として活躍できます。)
・特定の不快感、体調や症状に合わせて、それぞれの品種の特徴が持つ保健効果・効能を期待することができる。
・最適な茶種(煎茶や抹茶、玉露など)を作ることができる。
・安定した品質・価格で購入することができる。
などがあげられます。

どんな品種がある?

品種は、煎茶だけではなく、望まれる味の特徴によっても全く違います。抹茶にしておいしい品種、玉露や煎茶にしておいしい品種など多種多様ですが、もしかしたら既に皆様方も口にされているかも知れません。

抹茶は、茶葉を石臼でひいて、粉末にします、茶せんなどの茶道具で点ててまるごと頂きます。ですので、粉末状にします。緑色が綺麗で、苦味渋みが少なく、うま味の強い品種が好まれるようです。<あさひ><さみどり><展みょう>といった品種をよく見かけます。

玉露は、濃厚なうま味、芳醇な香りが強い<ごこう><さえみどり>などが有名です。やぶきたの玉露やさえみどりの煎茶などもありますので、この品種はコレ!と決まったものではなく、特徴を活かしたお茶作りがなされています。

煎茶は、うま味と渋み、苦味のバランス、爽やかさが好まれますので、<やぶきた><ゆたかみどり><あさつゆ><つゆひかり>などの品種がよく使用されます。

*全国茶品評会においても非常に多くの品種茶が出品・入賞しています(写真は一部)
「きらり31」は、近年急速に評価が高まり、今回は表彰台クラスのお茶が製造され、今後さらに飛躍しそうですので要注目です。

写真:おくゆたか、かなやみどり、うじひかり、ごこう、きらり31の茶葉

次期エース?注目の品種

茶業者でもまだお目にかかる機会があまりない、生産量の少ない品種ですが、じわじわと注目度が上がってきている品種5種です。

一言感想

「ゆめわかば」・・・ココナッツ!
「さえあかり」・・・ポップコーン!
「はるみどり」・・・うまい、もう一杯!
「そうふう」・・・バスクリン!
「きらり31」・・・貴族ですか!

※あくまで個人の所感です

写真:はるみどり、さえあかり、ゆめわかば、きらり31、そうふうの三段活用写真

おすすめの品種茶

ところで「品種を試してみたいけど、何が良いの?」という方には、3種類の品種をおすすめさせていただきます。

さえみどり

まずは「さえみどり」。煎茶にも玉露にも使用される品種です。

写真:さえみどり

おすすめの理由は、

1)うま味が強く、お茶の色も濃くてきれいなので、普段のお茶との違いを感じる。
2)品種の中では生産量が多いので、比較的手に入りやすく、価格も安定している。
3)近年、血液サラサラに効果が期待できる「ケルセチン配糖体」やリラックス効果の「テアニン」が品種の中では多く含有されているとテレビや雑誌でも話題の機能性品種という点があげられます。

購入のポイントは、1500円/100g程度の品質のものがおすすめです。安価なものは品種の特徴である「濃厚なうま味」が薄く、もともと渋みや苦味も少ないので、味が軽くなりがちです。「高いものを買わせようとしている」と思われた方はぜひとも値段でも比べてみてください。比較するのもお茶の楽しみのひとつです。

ごこう

次に、日本茶の頂点・玉露では「ごこう」。

筆者が個人的に大好きです。非常に香りが高く、淹れた際にはうすい乳白色がかった黄金色の浸出液ですが、濃厚なうま味、一瞬、クラっと酔ってしまうような風味は、日本茶の最高峰「玉露」の風格、重厚感を感じます。煎を重ねても品があり、最後は調味料を合わせて茶葉を食べることもできます。

購入のポイントは、3000円/100g以上から、一煎分(一回分)で小分け販売している専門店もあります。5,000円以上になりますと渋みはほとんど感じられず、日本茶の頂上の景色を味わえます。

ゆたかみどり

最後は「ゆたかみどり」です。

4月になりますと「新茶」のシーズンがやってきます。概ね4月中旬頃より店頭に並び始める「走り」と言われる最初の新茶は、ほぼ鹿児島県産になるかと思います。品種栽培面積2位の「ゆたかみどり」は早生品種で、新茶の時期、一番最初に広く出回ります。ですので、4月の中旬から下旬にかけて購入できる「かごしま新茶」は、かなりの確率で「ゆたかみどり」です。時期的に都内の茶専門店でも取り扱いが増えますので、お手に取る機会も増えると思います。購入する前に、ぜひ店頭で確認して楽しんでいただければと思います。

写真:開聞岳と茶畑鹿児島の茶畑/「薩摩富士」開聞岳を望む

購入のポイントは、1,000円/100g~でも十分に新茶のおいしさを楽しんでいただけるかと思います(もちろんちょっとお値段が上の方が、よりうま味が強く美味しいですが)。

*淹れ方ワンポイント

品種は品種によって淹れ方(お茶のおいしいポイント)が少しづつ違いますが、「ゆたかみどり」「さえみどり」は、浸出液(湯呑に注いだ時)の濃い緑色が先に出て、味が遅れてついてくる印象があります。ですので、色だけ見てサッと淹れてしまうと風味が薄くなってしまいます。急須に茶葉とお湯を入れたら、いつもより気持ちふた呼吸くらい長めに待ってからゆっくり淹れていただきますとより美味しくなるかと思います。ぜひお試しください。

写真:急須と茶碗

品種茶はどこで買えるの?

取り扱いがある店舗(スーパーやデパート、専門店やネットショップ)で購入できます。ネットショップの方が見つけやすいかと思います。産地直送や生産者が直接販売しているものも多く、高級なものからお買い得品、シングルオリジン(単一茶園単一品種)も豊富です。

しかし、もし、「おいしい品種」をお探しでしたら、ぜひとも我々【東京都茶協同組合加盟店】をおすすめさせてください。

実は、一言で「品種」と言っても、生産地によって味が異なります。栽培に適した土壌を選ぶということも大変重要です。同じ品種でも「この地域のものはおいしいけど、あちらの地域では特徴が弱い」「品種と書いてあるけど全然おいしくない」など同じ値段の同じ品種でも風味が異なります。またどのように茶の加工をすると良いか、どのように淹れたら美味しいのかなどの知見が必要です。

我々、組合加盟店は、日々培っている熟練の茶鑑定眼と、お客様に一番近い専門家として、特定地域、茶産地のみならず全国のお茶の中から、美味しいもの、良いものを選りすぐって地域の皆様にお届けしています。ですので、取り扱いの有無なども含めて、ぜひ一度、お近くの組合加盟店にお問い合わせくださると幸いです。きっと皆様方にピッタリの品種茶をご提案させていただけると存じます。

品種の詳しい説明

昨年、12月に開催された「日本茶アワード」において、「品種」に関しての特別トークセッションが行われました。農研機構の専門家の方が詳しく解説した動画が公開されていますので、ご興味のある方はご覧ください。

今後の品種茶について

写真:掛川の茶畑掛川東山の茶畑 山に「茶文字」

現在、日本においては残念ながら茶の栽培面積は減少傾向です。食生活の変化の中で、食卓でお茶を飲む習慣が失われつつあります。お茶の味=「やぶきた」の味ではなく、もっと色々な場面に合う、好みにあう魅力的な日本茶の選択肢として、日本茶業界をあげて品種が盛り上がってきております。

品種茶がお手元に届くまでの大まかな流れは、以下のようになります。

交配して、選抜して、試験が行われる(5年以上) → 生産者が試験的に栽培してくれる(収穫できるまで数年) → お茶問屋・専門販売店で取り扱う → お客様の反応も上々 → 生産者が栽培面積を増やす(数年) → 品質・価格ともに安定する → お客様が継続的に飲んで頂く →  栽培面積が増える・・・

品種は交配してから品種登録まで20~30年かかると言われ、普及するにはさらに10年~の歳月を要すると言われています。

品種が広まる流れの中でも、一番肝心なのは、『お客様の反応』です。

お客様が喜んでくだされば、品種の生産量も増えていきます。現在、世界のおいては茶の栽培面積は増加傾向にあります。また日本茶の品種茶を買い求める海外の方も多く、政府の海外輸出重点品目にも指定されていますので、今後さらに注目されていくのではないかと期待をしております。

ですので、皆様方にはぜひともお気に入りの品種=『推し品種』を見つけ、育てるつもりで長い目で応援していただければありがたいです。年を重ねるごとの品種の味わいや変化なども、お茶の楽しみのひとつにしていただけるのではないかと思います。

品種茶、日本茶を通して、皆様方の毎日が、少しでも良いものになることを願っております。

※茶の評価はあくまで筆者個人の感想です

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