タイトルを読んで、何のことなの?と思われたかもしれませんね。
この写真は、東京都茶協同組合の組合員が販売している茶袋(パッケージ)です。煎茶の茶袋32点ですが、同じデザインのものはありません。
これらの茶袋には、お客様に法的に伝える必要がある情報とお店がお客様に伝えたい情報、両方が掲載されています。
一括表示
まずは「一括表示」と呼ばれているもので、法的に決められた表示をしなくてはなりません。加工食品にはすべて適用されています。この表示は重要な情報なのですが、品質について評価するものではないといって差し支えありません。
一括表示はいろいろな欄があります。
「名称」は、煎茶、玉露、玉緑茶、玄米茶、ほうじ茶などです。
「原材料名」とは、その袋に入っているものを原則すべて表示しなければいけません。入っている量が多い順に表示するルールです。当組合では、食品添加物の入っている茶は取り扱わないという方針で臨んでいますので、玄米茶以外では「緑茶」もしくは「茶」だけが原材料として表示されることになります。玄米茶では、内容量の多い順に、緑茶→玄米と表示されます。
添加物などを入れている場合も、表示をする必要があります。ペットボトルのお茶では、緑茶、ビタミンⅭという表示があるので、添加物としてビタミンⅭが入っていることが分かります。
「原産地」については 国産、または生産地(静岡、鹿児島など)という表記になります。生産地として静岡や鹿児島あるいはもっと狭い範囲を名のる場合は、産地偽装にならないように証明できるものを製造者に要求します。国産であることの証明も必要なのですが、当組合員が扱うお茶はほぼ100%国産ですので、口頭で確認して証明を要求することはあまりないと思います。
「保存方法」については、賞味期限と関係があります。賞味期限は開封しないことが条件となります。また、気温25℃を超えると劣化が早くなります。開封したときも未開封でも、冷蔵庫に保存するのが良いのですが、開封した場合は他の食品からの移り香に気をつけてください。袋のままゴムバンドなどで口を縛って、缶や密封容器に入れて保存してください。
「製造者」お茶を仕上げたところです。最終的に詰めたところの場合もあります。
「加工者」仕上げたお茶を最終的に詰めたところです。
「販売者」製造者に詰めてもらっています。販売者だけでは、責任の所在が明らかにならず、固有記号か製造者を記載する必要があります。これは、異物等が入った場合そのお茶に対する責任を明らかにするために行っています。
店の思い
一方、「一括表示」以外にも店の思いが記されています。写真を見れば分かりやすいので、興味がある方はこれを見ながら「なるほど」と言ってもらえれば幸いです。
例えば「新茶」という表記が多くあります。4月上旬から5月上旬にその年一番初めに摘んだお茶のことです。その他「こういうタイプの煎茶」だということが記されています。また、キャッチコピーや独自の意匠を凝らしたデザインで、自分の店のお茶の魅力を表現しています。
好みのお茶を見つけよう
皆様のなかには「産地直送が一番!」と思っている方がいらっしゃるでしょう。「産地だし割安そうだし」と考えていませんか? そうなると、お茶を仕上げている現地の製造者がすべてやればよい、ということになりますね。
しかし、お茶を扱うには、茶葉の良し悪し、産地や品種の違い、製造方法を見極める技量が大切なのです。東京都茶協同組合組合員の各店舗スタッフはいろいろな産地のものを見ており、茶に関する包括的な知識を豊富に持っております。
産地は主要どころで、南の鹿児島(種子島、屋久島)から始まります。九州地方から北上し、静岡、三重、宇治、狭山という順です。そして、品種により採れる時期も異なります。ゆたかみどり、さえみどりなどの早生品種から標準のやぶきたに移ります。このほかにも晩生品種を含め、本当に多くの品種があるのです。小売店のスタッフは、これらをきちんと学習しているのです。
お茶を製品化するためには、様々な製造過程があります。その中で重要なものは「蒸し」と「火入れ」です。同じ茶葉でもこの違いにより様々なタイプのお茶になります。これらのお茶をどのように合組(ブレンド)するかが、小売店の腕の見せどころ。
それぞれの価格帯に、それぞれの味、香り、形状のイメージを持ち、それにふさわしいお茶を合組で作っています。つまり、小売店の五感すべてを使って表現した緑茶のオリジナルブレンドとなり、これを作ることが小売店の最も重要な使命と言ってもいいでしょう。
コーヒーの提供過程を想像すると、イメージしやすいかもしれません。ブルーマウンテン、ブラジル、モカなど、単一な品種の豆でも品質の差は必ずあります。これらをブレンドする場合には、それぞれの欠点を補ってリーズナブルな価格にするという理由があります。お茶でも同じことが言えます。
製造所で単一のお茶を詰めてもらうだけではなく、小売店スタッフの鍛えられた味覚や嗅覚を根拠に自信を持っておすすめするお茶を、ぜひご賞味ください。
他の工業製品と違い、比較的小ロットで製品化できるのもいいところです。ただし、お茶は農産物。他の工業製品のように「いつでも同じ物」は作れない、というところも味わっていただければ幸いです。