新茶の採れる時期は、風土と気候によって変わります。
始まりは、種子島や鹿児島などの暖かい地方から。
ちょうど桜前線が北上するように、南から北へ、また低地から高地・山間地へと、日に日に移動していきます。
4月の声を聞くと、種子島より「松寿」という品種が入荷したというニュースが入ってきます。また、同じころ、「くりた早生」というクリーミーな味の「極早生」の品種ができます。
4月5日を過ぎると、鹿児島の枕崎、1〜2日遅れで頴娃(えい)、大隅半島の大根占(おおねじめ)の「ゆたかみどり」の生産が始まります。その頃から生産量も倍々ゲームのように増加し、4月10日前後には10万㎏の生産量に膨れ上がります。
鹿児島の新茶期は長く、この時期の鹿児島の茶市場には、多くの品種茶を見ることが出来ます。
頴娃の「ゆたかみどり」が全盛を過ぎたころ、「さえみどり」という品種が出回ってきます。これは、被覆することで深い緑色の水色と甘みが出た品種で、現在とても人気があります。「ゆたかみどり」に比べると1,000円/㎏以上の高値がつきます。本年の「さえみどり」は、味も乗り良くできた年となりました。
4月も半ばを過ぎるころから、枕崎より「やぶきた」が出回り始めます。「ゆたかみどり」も、有明、田代、溝辺と北へ移っていきます。
宮城県境霧島山麓で「やぶきた」が生産されるころになると、静岡の新茶も出始めます。そして、霧島が最盛を過ぎるころ、南では種子島より2番茶が始まります。
静岡の路地物の始まりは、御前崎からスタートを切ります。
2014年はスタート時期にあまり差がなく、牧の原台地の南、海岸よりから徐々に高地に上がっていきました。
磐田、袋井と共に、今年は深蒸しの産地、初倉も早いスタートを切りました。
掛川も、南部からひがしやまへと生産が広がっていきました。
本年は4月29日と30日と雨になったこともあり、5月2日(八十八夜)と3日が、早場所の「一番味の乗ったお茶」の摘採日になったように思います。値段からすると、100g1000円から1500円売りくらいのお茶が、今年のおいしいお茶の値頃です。
山間地に入ると、新茶のシーズンは、もう少し遅くなります。
深蒸し中心の牧の原台地(低地)も、島田から大井川を上り、中蒸しや普通蒸しの本川根になると、5月10日前後が川根茶の葉の熟度も増すおいしい時期になります。
本山、天龍、梅が島など山手の山間地では、この頃から5月後半まで新茶シーズンが続きます。
遅場所である宇治、狭山、足柄、静岡では、沼津と富士駿東が終了することで、一番茶は一段落します。
番刈りをして、約40日して芽立つ二番茶に備えます。
2014年は大きな霜害もなく天候に恵まれ、5月9日の日経新聞に掲載されたように取引相場も安かったこともあり(「新茶、夏にちょっぴり安め」)、品質の良いお茶が割安に買える絶好の年となりました。
夏に向け、おいしい冷煎茶などお得感をアピールするところも多いことでしょう。本年は、ぜひおいしいお茶を楽しんでいただきたいと思います。