2014年10月20日(月)、農研機構(NARO)野菜茶業研究所農学博士・水上裕造氏を講師に招いて「緑茶の魅力と将来性について〜茶葉火工技術と品種を通して」と題し、講演会と試飲会を開催しました。
この記事をご覧になっている方でも、価格さえ同じならば、緑茶はどこで買っても同じと思っていらっしやいませんか? イタリア料理やラーメン店のことでは「ここの何々がおいしい、あそこのあれがうまいと」熱く語り合っているのに……。
実は、私たちお茶屋も、「自分のお店独自の緑茶」を提供しています。
緑茶は滋味・香り・水色(抽出した茶の色)・外観(見た目)をもとに検討するのですが、多くの茶専門店は特に「滋味と香り」を重要視しています。
ではそこで、「独自というのは何なの?」ということが、当然気になりますよね。
茶葉自体は当然のことですが、茶葉の「加工方法」でお茶の味は大きく変わります。
加工方法で最も重要なのは、「蒸し」と「火入れ」の行程です。
蒸し
なぜ「蒸す」のかいうと、生葉に含まれる「酸化酵素」を不活性化(止める)ためです。これをしないと、理論的にはウーロン茶や紅茶になるはずです。
よく、ウーロン茶は半発酵茶、紅茶は発酵茶といわれるのですが、厳密にいうと誤りということになります。「発酵」には微生物が関与するのですが、お茶ではそういうことはないからです。
ということで、蒸すのは「酸化を止めるため」とご理解ください。また、蒸す時間が長ければ長いほど茶葉は柔らかくなるので、茶葉の形が細かくなるのは、お分かりいただけますよね。
火入れ
次に、「火入れ」について、お話ししましょう。
皆さんはコーヒー豆を見たことがあると思いますが、火入れ(焙煎)が強ければ強いほど豆の色は濃くなりますよね。
分かりやすく言うと、「火入れ」は、それと同じことを、期せずしてしているのです。
これをしないとどうなるか。
薄く、青臭い味になります。また、どんどん温度を高くしていけば、ほうじ茶になります。ここの按配が難しいところで、各自の好みが出るところです。
「蒸し」と「火入れ」の再確認
今回の試飲会の目的は、「蒸し」と「火入れ」の再確認です。
同じ茶葉で、蒸し3種類・火入れ3種類のお茶を飲み比べました。
自分のお店の緑茶はどのタイプなのかを知り、こういうタイプの緑茶なら新規に扱ってみようかという気持ちになることを、目的にしました。
皆さまが、当組合の認定店にいらっしゃった時には、ぜひ、「蒸し」と「火入れ」がどのタイプの緑茶か、質問してみてください。
ただし、蒸しはお分かりになると思いますが、火入れは「何度で弱火・中火・強火」という定義があるわけではないので、飲んでみてご判断くださいということになるかもしれません。
お茶の品種
皆さんはお米の品種(ブランド名)はいろいろ知っていると思いますが、お茶の品種についてはどの程度知ってらっしやいますか。
緑茶の中で、おそらく皆さまが一番なじみのあるのは「煎茶」でしょう。
そのなかで圧倒的シェアを誇るのは、「やぶきた」という品種です。そのほか、「あさつゆ」、「ゆたかみどり」などがあります。
私見ですが、お米と違い、お茶は「蒸し」、「火入れ」という加工技術があるために、お米のように品種の多様化が進んでいない気がします。
茶葉の品種に多様性が無いということは、同じ産地であれば、採取時期が同じになる。1〜2日摘む日がずれると出来に大きな違いが出てきてしまう。気候に左右されるなど、のデメリットがあります。
よく聞く「煎茶はどこのお店で買っても同じ」との指摘に対し、お茶屋としては、「品種が同じであるので30%納得」、「70%反論」という気持ちになります。
浅蒸し5種類の緑茶を試飲
そこで、新種の研究をしている公的機関野菜茶業研究所の水上氏を講師にお招きし、前述した以外の品種で浅蒸し5種類の緑茶を試飲してみました。
この方法で、茶葉の品種特性が一番分かる、と言われているからです。
もちろん2〜3種類の品種を取り扱っている認定店はありますが、扱い量はそれほど多くないと思います。
今回は時間の関係で、充分に試飲できない面もありましたが、このような試飲会を実施したことを機に、「蒸し」、「火入れ」を変え、新しいお茶の味に今一度チャレンジする予定です。
品種の名前について
茶葉の品種には、「○○みどり」、「○○ひかり」、などのパターンが多くあります。
また、「べにほまれ」、「べにふうき」のように、「紅(べに)」がつく品種もあります。これはご推察の通り紅茶として加工されたり、「花粉症に効く」ということでそのシーズンに販売されたりしています。
その他最近では、「やぶきた品種」の紅茶が「和紅茶」などの名前で販売されています。ぜひともお試しください。マイルドな味で、ストレートでいけますよ。
水色について
最後に水色(抽出したお茶の色)について、お話ししましょう。
いま人気があるのは明るい緑色ですが、本来は「金色透明が一番良し」とされていたことを覚えていてください(これについては、別の機会に詳述したいと考えています)。金色の中に「赤みや黒み」があるのはマイナス評価となります。
選ぶのはお客様であり、選ばれるには理由(わけ)があるのは承知していますが、私はペットボトルの水色を見るとがっかりします。
それをカバーするために抹茶をいれているものもありますが、CMのように抹茶の味がわかるほど入っていませんし、いつもどうしてこれが人気なのか考え込んでしまいます。
まとめ
以上、緑茶の決め手は「蒸し」と「火入れ」ということが、少しイメージしていただけたでしょうか。
でも緑茶を飲むときは、あまり難しく考えないでくださいね。
消費者のみなさまは、「気に入るか、入らないか」でご判断ください。
面白いことにお気に入りは段々、変わっていきます。だから面白いんです。それと、ぜひ濃い目に入れてみてください。