2025年1月6日

【2025】東京都茶協同組合理事長より新年のご挨拶

写真:新春のイメージ

日頃は東京都茶協同組合加盟店をご愛顧たまわり、誠にありがうございます。

私達が若いころから「若い人にお茶を!」と言いつがれてまいりましたが、昨今、お茶を飲まれる若い方が多くなってきたように思います。

昨年の「日本茶アワード」大賞が烏龍茶であったことを見ても、この1〜2年は、和紅茶や日本で作る烏龍茶など萎凋したお茶、発酵茶の人気があるようです。

また、インバウンド需要もあり、世界的には「抹茶」の消費量が異常に動いております。

ご存知のように「抹茶」は、日本ではもっとも古い製法です。

初め日本で飲まれたお茶は、中国より入ってきた固形茶を削って煮出したりして飲んでいました。その後、乾燥した茶を薬研などで粉末にし、それを碗に入れ湯を注いで点てるようになります。

現代の急須で飲む蒸製の煎茶は、江戸時代に永谷宗圓(1681〜1778)により完成されました。茶葉を蒸し焙炉の上で乾燥させる、日本特有の製法の「青製煎茶製法」です。

当時の茶(抹茶)は、茶師という特別な資格のある人のみが作ることを許され、将軍や貴族大名の特権階級の人だけ飲める特別なものでした。

しかし、宗圓以後、宇治製、青製と言われ売茶翁高遊外の努力もあって、全国に普及していきます。その頃のお茶は九州に中国からはいってきた釜炒り茶、茶葉を煮て日干した黒茶と言われる晩茶が一般的でした。江戸のあった茶商 山本嘉兵衛が街道筋の茶生産を宇治製に切り替え、文人派の画家やインテリ階層に急須で淹れる煎茶が持て囃され、普及することになりました。江戸末期には輸出品としてのお茶が作られるようになり、焙炉における手もみ乾燥に工夫が凝らされ、当時流行の剣道の流派を真似て、多くの流派ができます。

しかし明治5年ころより粗悪な贋茶が輸出されるに至り、アメリカが輸出禁止令を出したことで、明治10年頃に自粛的に組合を作られ、自粛規制を行い、現在の組合の原型ができました。

その頃、多田元吉がインドより茶の種子を持ち帰り、インド種が日本に芽を吹くことになります。

日本の品種の源流は各地に根づいている在来種、そしてこのインド、アッサム種と宇治種が主なものです。

その後、かけ合わせ、実生により「やぶきた」が杉山彦三郎によって作り出されます。また手もみによって製造されてきた茶の製造も高林健三による機械化が進み、手で作っていた形を似せて機械の形も作ってあり、現在水は分量でオートメーション化され、すべての工程が機械室でできるるようになっております。

しかし何かあるときは、手もみによる水分の感触を頼りに判断をします。

そして茶の葉の摘採も機械化し、手摘みから、手鋏、バリカン(小型摘採機)、可搬式、自走式、レールからミリ単位で調整可能な乗用摘採機になり、袋に入れずにそのままコンテナ集荷出来る様になってきました。ここ150年ほどで機械化、効率化は非常に合理的に改革されてきました。

しかし、これからお茶に対してどんな嗜好が求められていくのか、先の分からない局面にあるように思います。

歴史の中で私たちは常に新しいものを選択してきました。お茶の基本は「味」と「香」だと思っています。以前、京都にてお茶の味について教えていただいたことがあります。お茶の味は1、風土、土壌 2、肥料 3、加工によって決まる。

50余年前は「味」を主にして、深蒸し茶に力を入れてきました。現在「深蒸し茶」の持つ創生期当時の肥料の味や深蒸しの味を知る人年齢的に少なくなってしまいました。

またその頃が、「在来種」から「やぶきた」に切り替わってきた時期でした。「やぶきた」は肥料食いな品種ということもあって、その分深蒸し茶には肥料の味が大きく影響をしているのかもしれません。

昔のお茶が全て旨かったと言うつもりはないのですが、以前見習いで鹿児島に於いて全国茶品評会に出品するお茶の手摘みに参加したことがあり、その時の指導が「本葉は一万円札の大きさにして一芯四葉摘採」と聞いた事がありました。

当時でも静岡の本葉は5cm位でしたので、一芯三葉摘採のとの形状からの審査では、とても品評会の上位は静岡にはかなわないが、味の点では雲泥の差が出るなと思っていました。

農度障害を起こすまでとは言いませんが、環境汚染による減肥になる前までの、茶の木にとって充分に満足のいく肥料をあげていただきたいと思うのです。充分な肥料と日照、水分があって、お茶の木に負担の掛からない栽培と育成があれば「日本茶の茶業は良しとするべきかな」と思っております。

当然品種によって「やぶきた」のように肥料喰いの品種もあれば、肥料の少ない方が香の立つ風土、土壌の品種もあります。また品種によりますが、「玉露」のように被覆することで味、香の増す製法もあります。

しかし、本来茶の木は、被覆をしない方が負荷が少ない植物のようです。

その場所その木に合った対応が大切ですが、負担を掛ければその分肥料栽培によって補わなければ生育できなくなります。人身と一緒で、多少は多めの方が体力不足よりは病虫害や霜害など寒さに耐えられる様に 私自身の体で感じながら思う次第です。

文頭にある萎凋は加工によるものです(一部、分品種によるものもあります) 。即ち「香」を主にして加工したものです。「香」はどちらかと言えばストレスや全体的に不足気味の方が香を放つような気がします。

私が今の店に入った頃、神奈川のお茶屋さんにお邪魔した時に白毛で覆われた「碧螺春」というお茶を飲んだことがありました。

その頃は、深蒸し茶が一番味の旨みが濃いお茶だと思っておりました。深蒸し茶を飲んだ後にそのお茶を飲ませていただき、白濁した薄いお茶でしたが、ほとんど白湯の味で、香も薄く中国のお茶はこんなお茶かなと思って、もう一度進められて深蒸し茶を飲んで、信じられないほど驚きました。深蒸しのお茶が、人工的な人の手が加えられた肥料の味と感じられたのです。

碧螺春は芯だけを炒って乾燥しただけのお茶で、強い成分があるお茶ということは知っていましたが、「淡白な味」というものに衝撃を受けたのは初めてでした。すぐさま黒い丸い缶50g/50個ぐらい入っていたと思いますが、1ケース分けてもらい販売しました。今考えても高価すぎてそれほど売れませんでしたが、味、香と言いつつも自然の物の味香というものはそのようなものなのだと思っております。

お茶屋は茶時期になるとお茶のことしか考えなくなります。今年も新茶が美味しくなりますように!

東京都茶協同組合
理事長 君野信太郎

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