お茶につきものな、「お茶請け」。関東では雑菓子、関西では生菓子が、代表的なお茶請けとされています。
お茶請けにはこれといった決まりはありません。
せんべいや漬け物のような辛いものでもよく、実際に好まれていますが、普通はお茶うけと言って真っ先に思い浮かぶのは、砂糖の入った甘い菓子、特に和菓子でしょう。
和菓子がお茶請けとして用いられるようになったのは、砂糖が我が国に入って来てからのことで、近世以降です。
それまでは例えば千利休の初期の茶会を見ても、お茶請けにはカヤ、クリ、クモタコなどの木の実が使われ、甘い菓子ではありませんでした。
当初砂糖は大変貴重な輸入品で、その市場を牛耳っていたのはポルトガルでした。砂糖はポルトガル人の手によって世界に広まり、その結果、世界中の味覚の基準が辛さから甘さへと変化を遂げました。そこでお茶請けも甘い菓子へと移り、和菓子が発展したのです。
ところでお茶請けは、単にお茶の味を引き立てるだけでなく、他にも大事な役目があります。
お茶には茶カテキンやカフェインといった胃を刺激する成分が含まれているため、お茶請けを先に入れることで、これらの成分の胃への刺激を和らげるのです。
お腹がすいた時にはブラックコーヒーではなく、ミルクや砂糖を入れて飲むほうが胃にいいと言われるのと同じです。
お茶請けは、胃をいたわるための先人が生んだ「智恵」とも言えましょう。