2023年12月29日

絶対に負けられない闘いが、そこにはある!~理事長杯レポート~

2023年11月23日、東京・新橋の東京茶業会館8階ホールにて「第72回東京都茶審査技術競技大会」が行われました。昭和28年の東京茶業青年団設立から続く、歴史ある大会で、東京都茶協同組合の組合員、従業員、ご家族の方なら誰でも参加できるフレンドリーな大会です。しかし、この大会名、実は「理事長杯争奪戦」と呼ばれ、自身のお店の矜持と、所属する支部(地区)の名誉をかけた熱戦が繰り広げられる、まさに「闘茶」、闘いの舞台です。

写真:歴代優勝者に受け継がれている優勝カップ

本年この大会を制したのは
優勝 鈴木 敬済(栗原園) 
準優勝 小原 宜義(大山園)
3位 高橋 淳一郎(清風園)
4位 鈴木 智之(大佐和老舗)
5位 君野 隆乃佑(君野園)<*新芽賞>

(今回3位が3名同得点だった為、厳正なるくじにより順位決定致しました。)
(*新芽賞とは、初出場の中で一番優秀な成績の者に授与される特別賞です。)

写真:受賞者の皆さん

優勝の鈴木氏は、これでなんと3連覇です。日々の技術の研磨に敬意を表します。

今回の出題茶

今大会は、茶歌舞伎(5種類の浸出液をランダムに出して飲んだお茶がどれかを当てる競技)のみを行いました。出題茶は下記の5産地です。

花 狭山茶(埼玉県)
鳥 掛川茶(静岡県)
風 宇治茶(京都府)
月 八女茶(福岡県)
客 嬉野茶(佐賀県)

日本茶がお好きな方ならばこの産地は比較的特徴が強く「なぁ~んだ!」と簡単な出題茶だと感じられるかと思いますし、経験のある青年団員もそう感じておりました。
しかし、今回の出題者である東京茶業青年団団長は、茶審査技術十段位。現役の時代から、「茶歌舞伎のゴルゴ13」と異名をもつプロフェッショナル。狙った産地は外さない、つまり逆に選手にも狙わせないという、選手と団長との闘いでもあり、いつも以上の難問大会となりました。

写真:湯呑を取る様子どの湯呑を取るかも作戦の一つ

下記は、団長より大会後にありました茶の寸評と、参加者(執筆者)が実際に感じたお茶の特徴です。(個人の感想です)

ph20130906-001.jpg

花 狭山茶

蒸し度が強く、少し萎凋(生葉を萎れさせることにより醸成される芳香)させてあり、狭山茶らしい狭山茶とは異なるお茶。

鳥 掛川茶

比較的代表的な静岡茶風。しかし、形状、風味が狭山茶らしい狭山茶に寄せられている。

風 宇治茶(京都府)

いわゆる「普通煎茶」ではなく、深蒸しに近いお茶。少し火香があり、多少の知識と経験があると、脳が「宇治茶」として認識しづらい。

月 八女茶(福岡県)

被覆をしているが、鮮度感を落としており、わざとピントのぼけた風味にしたお茶。もはや、手が込みすぎている。

客 嬉野茶(佐賀県)

蒸し製玉緑茶。強い被覆がしてあり、むしろ「かぶせ茶」に近い。形状は深蒸し。茶歌舞伎で「玉緑茶」はかなり珍しい。闘茶会形式ではどのように浸出され、どんな印象か、どのように変化するのかに関しては経験値が少ない。

あらためて文章化すれば、特徴があり、わかりそうなものですが、「月」「客」の特徴が、お互いを行ったり来たりし、そして「花」「鳥」も然り。そこに「風」が忍者のように化けて暗躍してくる状態で、スコアボードを見ても、ほとんど皆点(5点満点)が出ず、低得点域で1点を争う、非常に根気のいる、集中力を要するシビアな状態でした。

写真:回答の様子びっしりと書かれたメモが特徴を捉える難しさを物語っています

東京都茶審査技術競技大会の歴史

茶審査競技大会の歴史を少しひも解きますと、戦後、お茶の需要は高いものの、品質が玉石混淆で価格も安定せず、各産地間でも特徴が違い、統一基準もなく優劣がつけられない状況の中で、茶の品質鑑定能力、茶の審査をする能力の向上が急務となり、鎌倉時代より伝わる「茶歌舞伎」(茶の服用による鑑別)の形式を、茶審査技術の向上を目的とした現代の様式へと変化させながら始まったようです。

高度経済成長期に入りますと、家庭での消費、贈答用など日本茶の需要も増え、日本の消費地の中心である東京では、多くの産地、種類のお茶が集まっておりました。嗜好も多様化する中で、そのお声に応えるように茶小売店・組合加盟店舗も増加していき、都内の茶専門店(東京茶業組合加盟店)は1500店舗以上にのぼりました。
その当時は参加選手も非常に多く、この理事長杯も、2日間に分けて多くのライバルが切磋琢磨し技術を競い合ったと記録があります。(東京茶業青年団設立時の草創期で団員数は約300名)

そしてこの大会(東京大会)を勝ち抜いた者だけが全国大会(全国茶業連合青年団主催・全国茶審査技術競技大会)へのチャンス、第一関門通過の切符を手にすることが出来ます。昔、東京代表は、この厳しい闘いを勝たなければ次に進めませんので、おのずと選手は精鋭中の精鋭が揃い、東京茶業青年団は「飲み(茶歌舞伎)の東京」と言われ、茶業界に名前を轟かす名選手・名茶師が輩出されていきました。

大消費地でお茶を扱わせていた頂く私たちは、自分たちの地域のお茶だけを扱う茶産地のとは異なり、全国各地の茶産地のお茶が集まる、今で言うところの「セレクトショップ」のような存在であり、数多くのお茶の中から吟味致しますので、自ずと全国のお茶を飲み分ける技術に優れ、結果、高成績に繋がっていたのかと思います。

写真:昭和の競技大会の様子1964年東京オリンピックの年に東京で開催された全国大会の様子

現在は、残念ながら団員の数、組合加盟店も減少し、理事長杯はかつてのような大規模な大会を開催することは叶っておりませんが、現在、出場する選手の顔ぶれは、皆「段位」保持者で、さらには全国大会歴戦の猛者ばかりですので、近年の理事長杯は神経戦のような難易度の高い大会になる傾向にあります。

これからも精進してまいります!

今大会の最後は、ご列席、大会設営にご尽力いただきました組合役員、諸先輩方より激励を頂戴し、理事長の君野信太郎氏より、「この大会を機に、自らを振り返り、さらに向上していってほしい」とのメッセージをもって、本年も無事に終えることができました。

左より 赤井総務部長代理 君野理事長 高野調査部長

余談ですが、これは昭和30年代の「東京茶業青年団」の何かのイベントの様子です。
この時代に女装をしており、時代を先取りしている感じでもあり、若干お見苦しい不細工な感じもありますが、今も昔も、団員同士、時にはライバルとして技術を高めあい、時には楽しい仲間として、日本茶の素晴らしさ、良さを伝えさせて頂きながら活動を致しております。

写真:昭和30年代のイベントの様子

今後も、私どもの活動にご注目を頂き、皆様方により一層おいしいお茶をお届けできるよう、この大会で培われた技術をもって努めて参りたいと思います!

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