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トップ -> 最新情報 -> 【連載】おいしいお茶を淹れる ステップ4「飲む人に合わせて淹れる」
いよいよ最後のステップです。まとめも含め、思い通りに入れる工夫と技術も勉強しましょう。
ステップ1において「おいしく淹れるポイント」について触れました。
1〜4の加減について説明をしましたが、大まかな目安を表にして下記に示しておきます。
茶種 | 淹れる人数 | 茶量 | 湯温 | 湯量 | 浸出時間 | 成分 |
---|---|---|---|---|---|---|
玉露 | 3人 | 10g | 50℃ | 90ml | 150秒 | 甘味の成分テアニン等のアミノ酸類の量が多い |
煎茶 | 3人 | 6g | 70℃ | 170ml | 120秒 | 甘味の成分テアニン等のアミノ酸類またカフェインの量が多い |
深蒸し煎茶 | 3人 | 6g | 70℃ | 170ml | 60秒 | 甘味の成分テアニン等のアミノ酸類またカフェインの量が多い |
番茶・焙じ茶・玄米茶 | 3人 | 10g | 10℃ | 540ml | 30秒 | カテキンが多く含まれます。カフェインは少量 |
ステップ3までに勉強したことは、この標準的な淹れ方が何故そうなのかという目安を示しただけで、お茶に寄り、また飲む人に寄り、臨機応変に変えなければなりません。
それには飲む人の状況、状態、気持ち、TPOに合わせて変化に対応できる技術も必要です。
ステップ1では廻し注ぎについて説明(2〜6)をしましたが、ここでは応用編として、飲む人に合わせて淹れ分ける「急須の使い方」にも触れてみたいと思います。
まず初めに大事なことは、飲む人を見て自分がどのように淹れたら良いかを決めなければなりません。
自分流のお茶をもって、「これがお茶です」という押しつけは、独り善がりです。
お茶は淹れる人の思いと技術によって、どのようにも変化してくれます。急須の中のお茶と対話をしながら状態を把握できるよう勉強しましょう。
基本として考えるポイントは、お茶の浸出具合と、「湯がどのようにお茶の間を通っていくか」にあります。
お茶の特徴を頭に入れ、茶碗に出てくるお茶の水色や状態を見ながら、加減をしつつ淹れます。
それこそが、お茶が歩んできた自然と人の関わりの集大成です。出来る限り飲む人においしいと思わせる一杯を淹れてみてください。
この部分は著者の経験則で、通常には当てはまらないこともあるとは思いますが、参考にしてください。
★子供に淹れる場合
親がカフェインを避け、お茶をあまり飲ませない家庭もあります。水で薄めて出すのも有りです。深蒸し茶など水色の濃い場合は濃いお茶と思われることが多いので、薄く出すか、出して状態を見て、即対応を! 説明や無理押しなどをしないことが肝要です。
★外国の方に淹れる場合
それぞれの国によって味覚や趣好が違うのですが、昔に比べると渋み、苦味に対して容認されてきたように思います。それでもアメリカの方は苦いのは敬遠される方が多いようです。それに比べヨーロッパ、特にフランスの方は玉露を好まれる方もあり、旨みに対する感受性が高いように思います。アジアの方は昔と違って日本茶を好まれる方が多くなりました。
★日本の地域性
関東は江戸時代より職人の町で、新鮮なもの、熱いもの、高級なもの好きな地域であり、煎茶が好まれてきました。それに比べ関西は旨みに対する感性を大事にする嗜好があります。玉露などに対する嗜好など湯量が少しで、ぬるくても高級な価値を見出す地域性があります。
鹿児島で生産するお茶も関西向け、関東向けと作り分けるほど趣向が違っています。関東は深蒸し茶が主流ですが、関西は浅蒸しになります。この嗜好性の違いは、同じお茶で淹れ分けるのは難しいかもしれません。お茶も違えば必然的にお茶の淹れ方も変わってきます。
★1 早急にお茶を出す
お茶販売をしていると急いでいるお客さんもあって、10秒と待たずに淹れなければならない場合があります。せっかくおいしく淹れてもお客さんが帰ってしまっては元も子もありません。
本来はお茶を淹れてお盆に乗せ、お客様に差し上げるものですが、そんな時はお茶を飲んでもらうことが最優先ですので、急須をもって、お客様の目の前でお茶を淹れることも場合によっては可です。
今まで学んできた淹れ方は、すべて急須に湯を注いで静止した状態での浸出時間が書かれておりますが、急須を動かすことによって出方が変わってきます。そんな時の一番早く濃く出す方法は、廻し注ぎをするように一つの茶碗に何度も出す出し方です。
お茶と湯が急須の中で絡み合うように動くので、この方法ですぐ濃くなります。
★2 二煎目を薄く出す
一煎目を淹れた後、二煎目薄いお茶を淹れなければならなくなったりすることが、間々あります。そんな時にとても役立つ方法で、この方法でお茶の濃さは自由自在です。
一煎目を淹れた後、注ぎ口と反対の急須の胴部分を叩きますが、それを強く叩くと叩いた胴の後ろ側に張り付きます。
二煎目の湯を注ぐ際に注ぎ口側に注ぎ、茶が湯に馴染まないうちにそっと二煎目を出してしまいます。即ち湯に混じった部分だけの量のお茶で二煎目を淹れたようになり、急須の中でのお湯の量、お茶の量の違いで薄いお茶になる訳です。
★3 三煎目を丁度良く出す
三煎目湯を注いで急須を回します。胴裏付いたお茶が崩れるようにお茶と湯が混ざります。混ざると同時に素早くお茶を出します。ゆっくりしていると濃くなりすぎるので素早いタイミングで三煎目を淹れるのがポイントです。
いよいよこれで終わりとなります。5週に渡ってお付き合いいただき、有難うございました。
お茶を淹れて世界が広がり、奥行きも深まっていきます。経験が必要な部分もありますが、それと共に楽しみが広がって、より多くの人がお茶を楽しんでいただければ幸いです。