皆さんは、日本茶にはどんなものがあるか、知っていますか。
緑茶と思った方は、残念ながら×です。
玉露・煎茶・玄米茶・茎茶・芽茶・ほうじ茶などを思い浮かべた方は、○です。
そして、実は、このほかにもいくつかの名称のお茶があるのです。地域では飲まれているものの、いろいろな事情であまり生産されていないお茶があります。
「茶専門店」としてはそれらを販売できないかを考えていました。
今回は、九州地区でよく飲まれている「釜炒り茶」と「玉緑茶」2種類のお茶を、くまモンの里「熊本」から有志の組合加盟店で取り扱うことにしました。
販売店には「くまモン」のポスターが張られていると思いますので、それを目印にどうぞ。茶袋は「くまモン」がデザインされています。
また、お店に尋ねていただいても結構です。
私も今年6月に熊本を訪れたのですが、あちこちにまだ屋根部分がブルーシートに覆われている光景を見ましたし、熊本城を見ると復興はまだまだというより大変だなぁと実感しました。
ただし、少しでも復興の助けをしたいという気持ちと、熊本がかわいそうだからということだけでお茶を選んだわけではありません。
日頃、飲んでいるお茶のほかに日本茶にはいろいろなものがあるということを知り、その良さをわかっていただければということです。コストパフォーマンスは悪くないと思っています。
釜炒り茶
くまモン茶袋詰(100g) 1080円
釜炒り茶は、収穫した茶葉を蒸さずに鉄製の釜で炒ったお茶です。炒ることにより発酵を止めます。殺青(さっせい)とも言います。中国から伝わった製法で、昔はこの作り方が多かったようです。
和製ウーロン茶と考えていただければわかりやすいと思います。味は、ウーロン茶に比べると、渋みとうまみを感じると思います。
このお茶はやや渋みが強いので、渋みがお好きな方は90℃以上で、渋みが強いと感じた方は80℃〜85℃で、一煎目は45〜60秒で淹れてみてください。
二煎目は、お湯を注いだら待たずに淹れてください。脂を使った料理をいただく際、食中・食後に飲んでいただければ、良さをより理解していただけます。
茶葉の形はウーロン茶と似ていて、勾玉のように曲がっています。【注1】
【注1】多くの日本茶は、蒸すという工程により発酵を止めます。ただし、発酵といっても微生物が関係しているわけではありません。
玉緑茶(蒸しグリ)
くまモン茶袋詰(100g) 648円
収穫した茶葉を蒸して、そのあとの「揉む」という工程【注2】をせずに、ドラム(再乾機)に蒸した茶葉を入れ、熱風を通して勾玉状にします。
今回のお茶は蒸し時間が長いので、一目ではわかりにくいかもしれません。
そして、今回のお茶は覆いをしたものですので、水色は明るい黄緑色で、甘みを強く感じるお茶です。
淹れるお湯の温度は80℃〜85℃を目安にどうぞ。水出しでも、とてもおいしく飲んでいただけます。
【注2】祖揉→揉捻→中揉→精揉という工程を経ます。できた製品を「荒茶」といいます。覆いをして栽培したお茶について
お茶を栽培する過程では、自然に光を浴びさせて育てるものと、収穫前に覆いをかけるものがあります。
代表的なものが玉露ですが、覆いをする期間が20日間ぐらいです。
煎茶では地域差もありますが、覆うのは5〜10日間ぐらいで、かぶせ煎茶・かぶせ茶という名称になります。煎茶という名称でも売られているので、詳しくはお店の方に尋ねてください。
一般的に、は西の地域(三重・宇治・九州など)で多く生産されています。甘みを強く感じ、水色は一般的に黄緑色になります。
覆う素材は「よしず」や「藁」でしたが、近年は黒い科学繊維が多くなっています。
覆いと、テアニン/カテキンの関係性
なぜ、覆いをかけてお茶を栽培するのでしょうか?
お茶のうまみ成分に、テアニン(theanine)という物質があります。
お茶にしかないアミノ酸で、この成分が多いほうが上級茶となることが多いようです。
しかし勘違いしている方が多いのですが、テアニンの味を人間が感知することはできません。つまり、テアニンの味を人間はわからないのです。
テアニンは窒素と結びついていますので、茶に含まれる窒素の含有量を調べれば良いのではという考えになりますが、これだけを価値判断にするのでは無理があり、人間が感じるテスト(官能審査)がどうしても必要になります。
まだ、日本茶についてわからないことはたくさんあるのです。
テアニンは、日光を浴びると渋み成分のカテキンに変わります。
よく昔から、平地に比べて日照時間が短い山間地で川霧が出るところの茶が良いといわれていました。この理由が、ある程度科学的に証明されたのだと思います。
ここからは、個人的見解・嗜好ですが、カテキンはわかっているだけでも何種類もあり、どのようなカテキンかはわからないのですが、舌を刺す渋みのお茶はおいしいとは思いません。
ただし、渋みがマイナスと捉え過ぎているのは残念です。渋みが感じられないお茶はお茶と呼べず、うまみと渋みのバランスが肝だと思っています。
しかし、このバランスに個人差があり個人の嗜好が出るところであり、お茶屋同士で議論が白熱するところです。
近年、カテキンに関する研究が進んでいます。
カテキンの種類はたくさんあり、分からないこともたくさんあるのですが、抗酸化作用があることは確かなことのようです。これは人間の健康にとって非常に良いことといえます。
しかも、東京都茶組合加盟店では、化学的な物質を加えない日本茶を販売しています。これは、堅持をしていく考えです。
おいしく飲んで、知らず知らずのうちに健康にも役立っているお茶は、素晴らしいと思いませんか。「もっと飲んでね!」と思っています。
※ 「くまモン」は、「くまもん」でないことに注意しましょう。
文責 深谷智治